【雪男】俺らのイケメンマネージャー 4【男主】 (ページ33)

今日:27 hit、昨日:15 hit、合計:101,467 hit

＊ページ33

そんな世間話を続けていると、小水さんが呼んでくれたタクシーが俺の前で止まった。ドアが自動で開き、タクシーの運転手さんが俺の方に振り返った。

「阿部さんであってますか？」

阿部「あ、はい。合ってます。じゃあ、俺はこれで…」

そう言って海川さんに挨拶をしようとすると、ぐっと腕を掴まれた。

海川「えっ！阿部さんタクシーなんですか？いいなぁ〜」

阿部「え、海川さんもタクシーですよね…？」

海川「歩きですよ〜小水の奴、私のタクシー呼ばないで二次会行っちゃうんだもん」

阿部「えっ？！」

その言葉に、つい大きな声を出してしまう。
海川さんは、女性でしかも女優さんだ。年齢だって20代前半だったはず。そんな子のタクシーを呼び忘れるなんて、有り得るのだろうか…？

阿部「え、そんな事あるんですか…？」

海川「実はこれが初めてじゃなくて。五月蝿いし細かいし執拗いしくて、その上変に忘れっぽいところもあって。お陰様で家まで徒歩ですよ〜」

阿部「歩き？！」

眉間にシワを寄せながらそういう海川さん。
家までって…どこまで歩く気なのだろうか。結構遅い時間だし、短い距離だとしても女の子が1人で歩くとか、普通に危ないんじゃ…。

「あの、乗らないんですか…？」

阿部「あっ、いや、今…」

タクシーの運転手さんに声をかけられて、ふと気づく。
あ、そっか。海川さんにこれに乗ってもらえばいいのか。俺は別に駅まで歩けばいいし、まぁ何とかなるだろう。

阿部「海川さん、このタクシー乗って帰ってください」

海川「え〜？いや、でも申し訳ないし〜」

阿部「俺、メンバーと電話する予定があってタクシーの中で電話するのも少し気が引けるので」

海川「あ、じゃあもし良かったら…」

〜〜〜〜♪

海川さんが何か言いかけた途端、俺のスマホから音が鳴り出した。画面を見ると、着信に″ラウール″と書かれていた。恐らく、約束していた電話の事だろう。

阿部「あ、ちょうど電話きたので行きますね！じゃ、お疲れ様です」

海川「えっ、あっ、ちょっと…！」

俺を心配してくれたラウールをこれ以上待たせるのが申し訳なくて、俺は挨拶もそこそこに、通話開始のボタンを押して駅の方へと歩き始めた。

海川「チッ…失敗した……」